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シティグループが抱える不良債権を損失処理するに当たって、その大半部分について政府が損失を一肩代わりするというのである。
シティグループにとっては、その分については損失負担が発生せず、財務の悪化がかなりの程度、軽減されるわけである。
シティが保有する不良債権残高は、対策発表時点で三○六○億ドルであった。
この総額を損失処理していくに当たって、当初発生する二九○億ドル分の損失については、シティが自力で負担する。
その後さらに発生する損失については、総額の一○%をシティが負担するが、残り九○%については政府保証がつく。
つまりはその分については政府が肩代わりしてくれるということだ。
その代償として、シティは高配当の優先株を発行し、それを政府が引き受ける。
配当抑制や役員報酬制限についても合意した。
カネを出すと同時に、政府がモノ言う資本家になるというわけだ。
不良債権処理に伴う損失を補填するということは、事実上の不良債権買い取りに等しい。
政府保証であるから、厳密にいえば外科手術ではないし、買い取り価格問題が生じるわけでもない。
いわば、激痛発生時の痛み止めの投与保険のようなものである。
だが、シティの屋台骨が揺らぐことはない形で、彼らが保有する不良債権が処理されていくわけであるから、市場からみた効果としては直接的な不良債権買い取りとよく似ている。
それを好感して、いったんは三ドル台まで落ち込んでいたシティの株価は急回復を遂げた。
もう不良債権買い取りにTARP資金は使わないと宣言して、二週間も経たないうちに、事実上の不良債権買い取りへの資金投与を発表する。
まさに迷走型モグラたたきだ。
なぜ、そうなったのか。
理由は簡単だ。
そもそも、政府が不良債権買い取り方針を撤回したことで、シティ株が売られたからである。
サブプライム証券化商品を始めとするシティの不良債権残高は、早くから市場の注目の的だった。
そこに政府による外科手術型救済のメスが入るということFRBも乗り出す政府がモグラたたきに奮闘する間、FRBからも新たな対策が打ち出された。
二月二五日、シティ支援策発表の翌日である。
バズーカ砲も数を撃てば当たる確率が高くなるという発想なのか。
まさしくなりふり構わぬ、文字通り連日の大盤振る舞いである。
こちらの方は総額八○○○億ドル。
住宅ローンや自動車ローン、学生向けローン等々、およそありとあらゆる債権を証券化した商品を対象に、買い取りあるいは融資を行う。
六○○○億ドルは住宅ローン担保証券の買い取りに当てる。
二○○○億ドルは他の債権担保証券保有者への融資である。
で、市場の期待も高まっていたわけである。
ところが、それが結局は行われないとなれば、シティの株価暴落は当然の成り行きだった。
要するに、政府はみずからの方針転換で撒いた種の後始末のために、再度の方針変更を余儀なくされたのである。
なお、TARPの迷走にはさらにまだ続きがある。
一二月に入って、今度は何と金融以外の分野に支援の手を差し伸べる展開になったのである。
その対象となったのが自動車産業である。
具体的な内容については後でみる。
国有化ラッシュ欧州にとって、地獄の一扉が開いたのは二○○八年九月末のことであった。
九月二九日、金融機関の経営破綻と政府支援、そして国有化ラッシュが欧州全土を覆った。
ドイツでは、不動産大手でかねてより資金繰り悪化が懸念されていたハイポ・リアル2足並み乱れる欧州このための財源の一部はTARPから出るが、大半はFRBの自己資金が投入きれる。
中央銀行が自腹を切って、不良債権あるいは不良債権化の懸念がある金融商品に投資するわけである。
これはもう事実上、ミイラ取りがミイラになった形に等しい。
そもそも、これらのリスク商品を多くの金融機関が抱え込むことで、グローバル恐慌への道が通じてしまったのである。
そこに中央銀行が踏み込むことは、大きくて誠に危険なカケだ。
中央銀行への信任のおかげで証券化商品の価値が下支えされるのか。
それとも、不良債権の重みに耐えかねて中央銀行への信任も輝きを失うのか。
手に汗握る綱引きがこれから始まる。
エステート社に、政府と民間銀行団による最大三五○億ユーロの融資枠が設定された。
ベルギー最大の金融グループ、フォルティスに対しても、同社が拠点を置くベルギー・オランダ・ルクセンブルグの三カ国が共同で四九%の同社株取得を発表した。
イギリスでも、中堅銀行のブラッドフォード・アンド・ビングレー(B&B)の一部事業の国有化が決まった。
同行の個人向け銀行部門をスペイン大手行、サンタンデール・セントラール・イスパノ(BSCH)傘下の英銀アビー・ナショナルに売却した上で、住宅金融部門を一時国有化したものである。
北極圏の小国アイスランドでも大手三行の一つ、グリニトル銀行が政府に株式の七五%を売却し、事実上国有化された。
欧州の場合、地獄の一扉を押し開けたのは、主として資金繰り難の連鎖である。
欧州の金融機関も、金融のグローバル化そしてIT化、工学化、証券化の波に乗ることには久しく力を入れて来た。
欧州では、いわゆる金融市場統合の動きが金融機関たちの熱気を一段とあおって来た面がある。
レバレッジ・ビジネスへの道金融市場の統合は、彼らにとって一九八○年代以来の課題だ。
EU(欧州連合)の求心力を揺るぎないものにするという意味でも、その経済的底力を強化するという意味でも、金融に関する「単一欧州市場」の完成は常に大きなテーマとして意識されて来た。
とくに一九九九年にユーロが誕生し、通貨に関する統合がひとまず実現して以降は、一つの通貨に対応した一つの金融市場の形成に向けての掛け声が強まっている。
これは当然である。
通貨が一つで、国境に制約されず流通している一方で、金融行政や金融市場を巡る規制・監督、そして慣行がバラバラでは、せっかくの単一通貨の経済効果も制約される。
ユーロ圏外に止まっている国々にとっても、ユーロ圏の金融制度がバラバラでは仕事がやり難い。
そこで、金融市場統合熱が高まることになる。
だが、反面、金融市場の統合が進めば、それだけ競争は激しくなる。
今まで国境で守られていた国内業務専任型の金融機関も、決して安閑とはしていられなくなる。
金利はもとより、様々な形で競争力を発揮していかなければならない。
かくして、統合欧州の金融機関たちは、アメリカの同業者たちに負けず劣らず、あるいは彼ら以上に金融革新を追い求め、危ない橋を渡るビジネスに力を入れるようになっていったのである。
実際に、わずかの資本で大きく資産運用を行ういわゆるレバレッジ・ビジネスについていえば、むしろ、欧州の金融機関の方が米銀よりも過激な面が多分にある。
株主資本対総資産比率でいえば、欧州大手行の数字が三五倍、ライバル米銀の平均が二○倍というような関係にある。
ドイチェ銀行に至っては、この数値が五○倍に達している。
しかも、このような高レバレッジ戦略を取るに当たって、多くの欧州金融機関が頼みの綱としていたのが、例のCDSである。
債権担保証券などへの投資についても、CDSで保険をかけておけば、その分、レバレッジの高さに伴う投資リスクは低下する。
それを頼りに、一段と小さな元手で大きく投資する戦略に突っ込んでいったのである。
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